日独自然エネルギー会議

主 催

独エネルギー機関(DENA)・マルティン・ルター大学・環境エネルギー政策研究所

場 所

ヴィッテンベルグ

参加国

日本・ドイツ

出席者

約 30名

会議日程

1月22日(木)

歓迎挨拶 (クリスチャン・オベランダー教授・マルティン・ルター大学)

基調スピーチ
(ドイツ側から)

自然エネルギー促進のための日独協力のビジョン
(ドイツ側代表:ハンス・ヨセフ・フェル独連邦議会議員)

基調スピーチ
(日本側から)

日本の自然エネルギー政策の展望
(日本側代表:河井弘之弁護士)
第一部 日独における自然エネルギー政策

ドイツにおける自然エネルギーの拡大(マルカス・クルジエフ/独エネルギー機関)
日本における自然エネルギー政策の現状(飯田哲也/環境エネルギー政策研究所所長)
日独協力の意味(ハリー・レーマン/グリーンピース)

1月23日(金)

第二部 自然エネルギー促進の地方の取り組み

地方における自然エネルギー促進のビジョン(逢坂誠二/ニセコ町長)
ドイツの地方自治体における自然エネルギーの取り組み(ラグウィグ・カルグ/コンサルティング会社)

第三部 自然エネルギー・ビジネスにおける日独協力

日本における風力発電事業の経験(クリストフ・クルト、/日本風力開発株式会社)
日本の風力発電マーケット(堀俊夫/株式会社ユーラスエナジーホールディングス会長)
ドイツにおけるグリーン電力マーケティング(トーマス・バニング)
日本におけるグリーン電力マーケティング(正田剛/日本自然エネルギー株式会社社長)

スピーチ概要
自然エネルギー促進のための日独協力のビジョン
(ドイツ側代表:ハンス・ヨセフ・フェル独連邦議会議員)
  なぜ、自然エネルギーが必要か?
地球温暖化の進展。温室効果ガスの原因の 80%が化石燃料。また、石油供給量が限られている。世界のエネルギーの82%が世界の22%の人口によって消費されている。一方、78%がエネルギーの18%に依存している。企業が自然エネルギー分野に参入できるような政策的枠組が必要である。
自然エネルギーはコスト高か?
外部コストも考えると化石燃料の方がコスト高。過去数十年で石油、天然ガス、ウランの価格は上昇し続けている。自然エネルギー価格は下がり続けることが予想される。グローバルなエネルギー革命が必要。自然エネルギーは失業率低下、雇用増大に役立つ( 1998年から13万人雇用創出)。社会民主党、緑の党は自然エネルギーへの研究開発費を高めることを検討している。
自然エネルギーの技術的側面
バイオ油によって動くエンジンを開発すればエネルギーの自給自足が可能となる。燃料電池については、自然エネルギーを使って水素を取り出すことが必要。
自然エネルギーのインフラ整備
自然エネルギーを普及させるためには自然エネルギーについての知識の普及、幼少からの教育、技術者の育成が必要である。

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日本の自然エネルギー政策の展望
(日本側代表:河井弘之弁護士)

日本の姿勢
日本政府は二酸化炭素削減を原発増設によって達成しようとしている。
新エネルギー促進法
2010年までの自然エネルギー利用比率の目標値が1.35%。対象とされているエネルギーの範囲が問題。ほとんどの小規模水力発電、地熱が対象外となり、廃棄物発電が大きな割合を占めることになった。くじ引きで風力発電事業者を決めている。また、2005年から太陽光発電への補助事業がなくなる。
自治体・市民レベルでの動き
政府の取り組みは不十分だが、地方自治体、市民レベルで野心的な試みがなされている。宮城県は独自に 8%の二酸化炭素削減に取り組んでいる。市民風力発電が3基動いている。「自然エネルギー促進法」推進ネットワークと自然エネルギー促進議員連盟が発足。

ドイツにおける自然エネルギーの拡大
(マルカス・クルジエフ/独エネルギー機関)

ドイツにおいては最近、バイオマス発電が伸びてきている。太陽光発電も伸びている。ドイツは 2010年までに自然エネルギーの利用比率を12%まで高めるという目標のうち、電力については達成可能だが、熱については問題がある。ドイツ自然エネルギー促進法 (2000)は自然エネルギーによる電力発電を経済的に見合うものにした。
・固定価格買取制度
・固定価格による 20年間の買取保証
・電力会社による買取義務
・通常の電力と十分競争できる
自然エネルギー産業は分散型の価値創出産業。中小企業レベルでのエネルギー創出が可能。構造的に弱い地域で産業創出が可能となった。

日本における自然エネルギー政策の現状
(飯田哲也/環境エネルギー政策研究所所長)

日本のエネルギー政策と市場
日本の電力供給のうち、ダム式水力が3%、自然エネルギーは1%。東京電力が全体の 40%供給。東京電力が政治的にも独占状態。経済産業省がエネルギー政策を立案。自民党の中では東京電力出身議員、原発立地地域出身議員が決めている。民主党の中では、電力会社の労組出身議員が決めている。自民党も民主党も原発推進。
70年代反原発運動、80年代代替エネルギー、90年代地球温暖化問題、2000年代地域イニシアティブ。
新エネルギー促進法
・目標値が小さい
・自然エネルギーの定義についての議論がない
・風力発電枠 330MWの募集に2040MWの応募があった。抽選で風力発電事業者を選んだ。
・熱に関する規定がない(バイオマスの普及が遅れている原因)。
明るい将来に向けての動き
グリーン・プライシング・プログラムが始まった。ウィンドコーポラティブが広がり始めている。地方自治体が具体的なエネルギー政策に取り組み始めた。

日独協力の意味
(ハリー・レーマン/グリーンピース)

ドイツでは 70年代にすでに自然エネルギーについて学術的論議が進められていた。日本に向けて自然エネルギーで100%エネルギーを自給自足するシナリオを考えた。エネルギー需要を半分にすれば、日本は再生可能エネルギーで自給自足することができる。

地方における自然エネルギー促進のビジョン
(逢坂誠二/ニセコ町長)

日本の自治体の現状
憲法で自治権が認められているが、中央政府の指示に従って、仕事をこなしてきた。これまでの自治体の主な仕事は社会基盤の整備であった。
昭和 50年代半ばから個別の自治体の課題が生まれた。70年代の石油ショックを契機として省エネが普及するようになった。
85年のプラザ合意をきっかけにバブル景気が始まり、国内での開発競争、海外での不動産投機が始まった。国内では浪費型の公共事業が行われ、その結果、国と地方合わせて719兆円の借金ができた。
少子高齢化に伴う過渡期の様々な問題が噴出している。このような中で地方分権化の議論が進められているものの、財政難、中央官庁の抵抗、構造改革に対する理解不足により、順調に進んでいない。
国税収入は 70%、地方税収入は30%。しかし、国の支出は30%,地方支出が70%。この40%の差で国は地方をコントロールしてきた。したがって、国と歩調を合わせなければ、地方自治体はやりたいことができない。知事と市町村長との連携が必要。先進的な知事のいる地域が狙い目。
自治体のエネルギー政策への対応
環境問題への配慮というよりも、原子力エネルギーに対する対応という形で自治体のエネルギー政策が進められてきた。最近では、環境問題への関心が高まってきており、 ISO14001を取得する自治体も出てきた。
「持続可能な社会を目指そう」という言葉が先行しているが、具体的な政策については何をしていいのか分からないのが現状。
ニセコ町の現状
人口 4000人。農業と観光が産業の中心。じゃが芋がおいしい。スキー客が年間360万人訪れる。
今後の課題
概念的なこと、実感が伴わないことを地域の人にいくら説明しても、行動には結び付かない。具体性を持った説得が必要である。

ドイツの地方自治体における自然エネルギーの取り組み
(ラグウィグ・カルグ/コンサルティング会社)

自然エネルギーを普及させるためには、需要、供給、テクノロジーのバランスが必要。
成功した 4つの自治体の例
・フライブルグ
太陽光発電を実現するため、様々な仕組みがある。 Fesa 自治体と事業者からなる団体。Fesa株式会社も成立した。建設業の団体もある。学校も自治体と節約契約を結んで、節約したお金を学校に提供している。国の補助に加えて、自治体も独自の補助を出している。
・シュナウアー
町自体が送電網を所有した。電力会社が 600の発電所から電力を買っている。バーチャルな発電所。4500世帯分の電力を供給している。
・ぺルウォーム
北海に浮かぶ小さな島。多様なエネルギー源を活用している。 Intelligent Energy Controllingと言っている。
・ブルッカーランド
食料の自給自足が出発点。 Local Agenda 21の一つがエネルギーに関するイニシアティブであった。ロゴを作って、ステッカーを貼る。一定の品質基準を満たさなければロゴを使えない。
成功の要因
きちんとした国内の枠組みがある。自治体と企業の協力関係を進める。全体としてのビジョン、大きな目標のもとでパイロットプロジェクトを進めることが重要である。中心人物が重要。中心人物を勇気づけるのがコンサル会社の仕事。

日本における風力発電事業の経験
(クリストフ・クルト/日本風力開発株式会社  www.jwd.co.jp/index.html
 

日本のパートナーを見つけ、北海道から始めた。 2000年にJapan Wind Developmentを設立した(従業員35名)。EOS Energy Ltd.はJWDの子会社で、日本の投資家がドイツにおける風力発電に投資する仕組み。東京のマザーに上場した。上場してから株価が9倍になった。
風力発電は電力会社が建設するので地元にコスト負担がない。送電網へのアクセスも電力会社が行う。オフショアは平坦な海床が必要であり、北海道、本州北部しかできない。また、漁業ロビーも強力。デンマークの経験が参考になる。

日本の風力発電マーケット
(堀俊夫/株式会社ユーラスエナジーホールディングス会長)

1980年代にスタート。1990年に電力会社が自主的に風力を買い始めた。1998年に経済産業省、電力会社が風力発電を買い始めた。また、北海道電力で入札制度が始まった。新エネルギー促進法が成立し、2010年までに風力発電を3000MWにする目標を定めた。2002年で460MW。
・風力発電の適地は限られている
・日本は山が多く、運送、建設に困難が多い
・送電網へのアクセスが難しい
・風力発電事業者は電気事業法の対象となっていない
・国定公園が日本の面積の 14%、森林保護、農地転用の問題もあり、規制上の問題点が多い
民間の事業者に対しては 26%、自治体に対しては50%が補助金の対象となっている。京都議定書では、日本は二酸化炭素排出量を1990年レベルの6%削減しなければならないが、逆に8%増えているのが現状。

ドイツにおけるグリーン電力マーケティング
(トーマス・バニング)

グリーン電力について話すときに、気候変動が何をもたらすかを語らなければならない。自然エネルギーで 100%エネルギーをカバーできる。技術ではなくて、政治とお金が制約になっている。電力会社にとって自然エネルギーは邪魔。また、投資家は短期間のリターンを求める。
既存の体制に挑戦するには、トップダウンではなく、ボトムアップが望ましい。既存の電力会社が水力発電をグリーンパワーと称して高く売っている。
自然エネルギー証書の取引。ドイツの電力供給の 8%が自然エネルギーであるが、その分、需要がない。グリーン電力については消費者の啓蒙活動が重要。消費者の良心に訴える。ドイツ連邦におけるグリーン電力の顧客は11700名。グリーン電力は通常電力よりも高価格である。平均的な顧客は2900KW。1ヶ月当たり5ユーロ高価になる。

日本におけるグリーン電力マーケティング
(正田剛/日本自然エネルギー株式会社社長  www.natural-e.co.jp

日本自然エネルギー会社は7つの電力会社、三井物産、住友商事が出資して、 2000年11月に設立された(資本金3億9500万円)。
需要サイドからのグリーン電力のマーケティング(Select Your energy!)を行っている。
(1)エネルギーを選ぶという「消費者の喜び」、(2)自然エネルギーに対する社会の認識が高まるという「社会の喜び」、(3)政策動向に依存しないマーケットを育成できるという「事業者の喜び」の3つの喜びを追求している。事業の柱はマイクロ水力発電事業とグリーン電力証書の販売の2つである。
・マイクロ水力発電事業
国内発電量の 10%が水力発電。既存電力も合わせると2010年までに10%前後が自然エネルギーでまかなえる。しかし、大規模な水力発電は困難。
用水路、下水路、農水路にマイクロ水力発電機をつける。土木工事がいらなくなる。メーカーと協力して、大中小という水車を大量生産。 KW/h当たり6円。8円位までなら競争力がある。
自治体の水道局と協力してマイクロ水力発電を設置。新エネルギー促進法を利用。グリーン電力証書を販売。利益を自治体と折半。 2005年までに17ヶ所で設置予定。
・グリーン電力証書
ソニーから東京電力に対してグリーン電力購入の依頼があったことがきっかけ。
エンドユーザーにグリーン電力証書(発電量と期間が明示)を販売し、その収益で風力発電所の建設資金に回す。二酸化炭素クレジットとの互換性を経済産業省と検討している。
企業を相手にマーケティングを始めたが( 43社、2自治体、4NPO)、いずれは一般ユーザーを相手にしたいと考えている。
風力発電については異なる発電所と消費者を結び付けるうえで効果的であった。マイクロ水力発電についてもグリーン電力証書を販売したい。
企業側としては、環境保護、イメージアップ、製品の二次的マーケティング(例:池内タオル)が目的。

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